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サフラン

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写真はイヌサフラン
偏差値重視の受験競争社会では若者の学習能力の向上が重大な関心事になるのは当然として、それほど深刻でなくとも、日常生活の中で大事な相手の名前を忘れたり、うっかりミスを繰り返したり、前夜の酒席での失態が思い出せないなど、頭脳の衰えがもたらすトラブルを座視できないと感じ始めている中高年は多い。それに加えて一層はっきりしてきた社会の超高齢化は、いわゆるボケ老人(老人性痴呆)の問題を浮き彫りにしている。

いずれも「能力」というよりは、そのものズバリ「脳力」の維持と開発に関わる問題であるが、この脳細胞に直接働きかけ、念願の知能能力の活性化を引き出すものとして近年新たな注目を集めたのが、可憐な花を咲かせるサフランである。正確に言えばサフランの雌しべに含まれる色素成分クロシンに、中枢神経の活性化、記憶力増強を図る作用のあることが明らかにされたのである。

サフランはクロッカスとも呼ばれるアヤメ科の多年草で、原産地は南部ヨーロッパ。春咲きのほか、9月中旬に球根を植えつけると10~11月には松葉のような葉の間から淡紫色の六裂の合弁花を開く秋咲き種も人気が高い。花には3本の淡黄色の雄しべと、柱頭が三裂して花冠の外にまで垂れ下がる細長い紅色の雌しべがあり、この雌しべを乾燥させたものが「サフラン」の名で婦人病薬(通経・鎮痛・鎮静)に用いられてきた。医薬品の記述としては紀元前200年頃のローマのムーキアーヌスは、胃・肝臓・腎臓・膀胱・肺の病気、咳、結核炎、酒の悪酔いなどに効くとし、ブリニイは『博物学』(紀元前100年頃)において、サフランが眠りを誘い、頭脳を明晰にし、媚薬としても用いられることを記している。中国では「蔵紅花」「蕃紅花」の名で呼ばれ、『本草綱目』(16世紀)では呼吸障害、嘔吐、悪寒にも有効であるとしている。日本でも血の道症、月経不順、更年期障害などの民間薬として使用歴は長く、日本薬局方にも収載されている。

主要成分のクロシンの存在は早くから知られていたが、これに新たな脚光を当てたのは、高年齢化社会における健全な精神活動の維持、健忘症や老人性痴呆の改善をコンセプトに研究してきた東京大学薬学部や九州大学薬学部の研究グループである。すなわち、人間の脳の中でも記憶・学習の成立に非常に重要な働きをしているのは海馬という部分で、近年は脳梗塞やアルツハイマー病の患者の会場の萎縮や、海馬の神経細胞の脱落が認められている。したがって海馬の神経活動を高める作用を持つ薬物が発見できれば抗痴呆症薬の有力候補となりえるわけで、いよいよ海馬が重要視されるのであるが、齋藤・正山教授らの実験ではクロシンを与えたネズミはアルコールによる記憶障害が明らかに改善され、記憶を司る脳の海馬の電気信号の働きも、与えるクロシンの量が多いほど高くなることが証明されたのである。そして、これがその後の多様な研究開発の契機となり、現在こうした研究成果を受ける形で、クロシンに脳力改善作用の向上が期待されるイチョウ葉エキスやビタミンEなどを配合した「健脳食品」も市場に出ている。

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