鮫の軟骨
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「鮫はガンにならない」という事実から研究が進み、それが鮫の全身を構成している軟骨の主要成分に深く関係していることが解明されるに及んで、一躍世界的に注目されることになったのが、鮫の軟骨である。その主要成分は「ムコ多糖体」と呼ばれる粘性物質(ネバネバ成分)で、コンドロイチン硫酸がその重要な構成成分の一つである。
コンドロイチン硫酸の化学構造が決定されたのは1946年のことであるが、その薬理作用の研究はその10年前に偏頭痛、抗潰瘍性を目標として臨床実験が行われている。コンドロイチン硫酸は「コンドロムコ蛋白」という形でタンパク質と結びつき、主に皮膚、血管壁、軟骨、靭帯、関節、眼球、角膜、粘液、各臓器などに分布して体内の結合組織を構成し、組織に保水性、潤滑性、弾力性を与え、皮膚のみずみずしさ、若々しさを向上させ、関節や靭帯の弾性、円滑性を保ち、栄養分の消化吸収・運搬、新陳代謝の促進、骨の成長や骨折の回復、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の防止などとともに、老化による眼球角膜の混濁を防ぎ、血液中のコレステロールや過酸化脂質を除去して、動脈硬化や高血圧、血液が凝固して血栓ができるのを防ぐなど、多彩な働きを持つ機能性物質である。
そのため、腎炎・リウマチ・神経痛・腰痛・五十肩・肩凝り・夜尿症・眼疾患・脱毛症などの医薬品にも用いられてきたのであるが、ここへ来てコンドロイチン硫酸が脚光を浴びるキッカケを作ったのは鮫の軟骨であった。1992年にアメリカのウィリアム・レーン博士が『鮫の軟骨がガンを治す』を刊行、追いかけるようにCBSテレビが末期ガン患者による臨床試験の好成果を報道したことが発端となった。
アメリカでは早くから、鮫(骨格全てが軟骨である)にガンができないことに気づき、1983年にはすでにロバート・ランガー教授(マサチューセッツ工科大学)らによって、ガンが成長するときに生ずる新生血管の形成を阻害する物質が軟骨に含まれていることが解明されていたが、これが改めてレーン博士らによって臨床的に実証されたということになる。さらに鮫軟骨粉末の投与による腫瘍重量の減少と鎮痛作用が明らかにされたのをはじめ、追いかけるように多数の研究者によって前記の生理作用、薬理作用のほか、抗ガン性などの実験結果が次々に公表されている。
需要が拡大しても化学的に合成することが困難なコンドロイチン硫酸は生物資源から直接分離精製する方法が取られており、以前から牛の軟骨と気管が用いられていたが、中でも純度の高い高品位のものが抽出できて、しかも抗ガン活性の高いことが明らかにされた鮫の軟骨が最近は健康食品用として注目されてきている。これは多少原料臭が残ることもあるが、香料や味つけ材料を加えるなど、摂取しやすい工夫がなされていて問題はない。